FCIテレーゾ会長インタヴュー

 

世界のトップ・リーダーに聞く

FCIテレーゾ会長とのインタビュー

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 ドイツ・カッセルの国際ピジョン・ショーで会わないか、とのテレーゾ会長のメールを頂戴したのは去る9月下旬のことだった。
 テレーゾ会長に初めてインタビューしたのは4年ほど前のことだ。この内容はインターネット上で紹介したが、それ以来時々メールのやりとりは行ってきた。

 テレーゾ会長については、ご存知ない方も多いだろうから、インタビューに入る前に、簡単にそのプロフィールを紹介する。
 かつては水俣病をも研究したという医学博士でポルトガル政府の公衆衛生局長を務めるホセ・テレーゾ氏が、ポルトガル協会の会長を経て、前マルケス・プラス会長の後を襲い、国際愛鳩連盟(以下FCI)の会長に就任したのは、2005年のポルトガル・オリンピアードでのことだった。
その後、ベルギーのオステンド、ドイツのドルトムント、ポーランドのポツナム大会で再任され、今度のスロヴァキア大会でも再任されれば、3期12年の長さとなる。

ポルトガル協会では、コンピュータリゼーションを推進。世界で最初に所有権証にバーコードを導入し、全ての鳩を一元管理するだけでなく、国中に公共鳩舎を建設、サッカーに次ぐ第二のナショナル・スポーツの地位を確立している。過去50年間のFCI会長の中で、もっとも評価の高い会長である。ポルトガル語の他、フランス語、スペイン語に堪能。

しかし筆者は半信半疑というか、狐につままれた気分であった。自分の鳩の成績には全く興味が無いという、純粋培養されたようなアマチュアの会長が、400もの鳩の模擬店が集まる鳩界商業主義の塊とも言えるカッセルのピジョン・ショーに出向かれる事自体が不思議だったのである。
しかし行ってみると答えは簡単、ミラのFCIグランプリ参加委託鳩の募集の為、ポルトガル協会のブース(模擬店)で、参加鳩募集の陣頭指揮をとっていたのである。


 

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吉原 お久しぶりです。最近、ご機嫌は如何ですか。
テレーゾ会長 ありがとう。私の家族ともども、とても結構です。仕事(保健衛生局長として)でも、FCIの会長職にしても、日々のストレスがありますが、鳩はこれらのストレスと戦うのを助けるという意味で、優れた健康プロモーターであると言わなければなりません。
吉原 テレーゾ会長は、これまで非常に革新的に世界鳩界をリードされてきました。恐らく今後もそうだと思います。しかし日本の人々は、テレーゾ会長については良く知りません。会長のそのような実行力、決断力の源はどの辺にあるのか。まずその辺のことを探る意味で、会長のプロフィールを伺いたいと思います。自己紹介をお願い出来ますか。
テレーゾ会長 私は若い頃から、サッカー、陸上競技、特に100メートル走では陸軍記録も作りましたよ。それにハンドボール、テニス、車、狩猟、釣り、ウィンドサーフィン等のようないくつかのスポーツを実践していきました。私の最大の情熱は、鳩の飼育を若者の間で促進することです。私も、年長者や若者をターゲットにしているよう社会的な支援活動に従事しています。
吉原 煙草やお酒は如何ですか?
テレーゾ会長 煙草は吸いませんが、良いワインと、当然のことながら、ポートワインは大好きです。ポルトガルは、あらゆる種類の、優れたワインを生産しています。白、赤ワインとも未成熟の、つまりフルクトースの含有量が少ない葡萄から作り出される "ヴィーニョヴェルデ"です。それに私は魚であれ肉であれ、良い食べ物を楽しみ、世界の旅行中に優れた料理を味わいました。もちろん日本料理も大好きです。
吉原 本はどのようなものを読まれますか・
テレーゾ会長  私には、いくつかのお気に入りの本がありますが、特にソルジェニーツィンの収容所列島が好きでした。ポルトガルの作家に関しては、エサ•デ•ケイロスは、私のお気に入りの一人です。残念なことに、仕事は私に長い読書のための時間を残さないので、普段の私は一般科目、地理、政治、それと鳩の雑誌に目を通しています。
吉原  日常生活で、或いは仕事の上での信条とか、基本理念にしていることはございますか。
テレーゾ会長 価値観と自由、それに真理の原則のために奮闘する事ですね。

吉原 それではそろそろ本題に移ろうかと思います。スロヴァキア、ニトラのオリンピアードが近づいてきましたが、どのような感触をお持ちですか?
テレーゾ会長 私は最近スロヴァキアに行ってきました。スロヴァキアは、僅か約4,400人の小協会ですが、組織は良いペースで活動しており、素晴らしいオリンピアードになると思います。
吉原 現在、FCIは、何か問題を抱えていますか? 予算についてでも何でも結構です。
テレーゾ会長 どんな組織でも問題はあります。FCIも例外ではありません。 FCIはその関連事業やスポンサーによって所得を得ています。私は現実的に、儲けるのではなく、必要な経費を捻出すべくFCIを管理してきました。私の目的は、持続可能な方法で収益と費用のバランスをとることです。
吉原 日本も様々な問題を抱えています。会員数の減少はもちろんそのひとつですが、例えば年間3000個の脚環を購入した連合会が、猛禽類の為にスタートが100羽以下になってしまうほどで、鳩の飼育を断念する人が多いなどの問題もあります。
テレーゾ会長 猛禽類は私たちのアスリート、すなわちレース鳩の直面する大きな問題です。しかし、これらの鳥は、全ての欧州諸国で保護されています。私はレース鳩を保護する法律を制定し、施行させようと考えています。

 

※このインタビューは、10月下旬のもので1月のFCI全体会議を前に、テレーゾ会長が、2期8年で退任するのか、それとも3選を目指して立候補するのかは分かっていなかった。

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吉原 テレーゾ会長は、FCIの会長としてのこれまでの実績をどのように評価されていますか。
また現在やり残したと思われることはございますか?
テレーゾ会長 FCIは、全ての各専門委員会の中で良いペースで作業してきましたが、特に技術部門やスポーツ部門を強調しなければなりません。私は、レース用具(協会脚環やチップリング)は、FCIにより登録され承認されなければならないと信じています。これはまだ実現していませんが、2014年までに必須事項となります。
FCIの2014年脚環は世界的に承認されています。色を含め、その属性はすべての国で統一されます。この1月のFCI国際会議では、会長に立候補することで、私は2015年までにはFCIのこの規定を加盟国間で批准出来るようにもっていくつもりです。
吉原 そのFCI脚環統一の意味をもう少し詳しくお願い出来ますか。
テレーゾ会長 2014年までに(FCIに加盟する)全ての国が同じ脚環を使用します。 これは既に特許化され、FCIによって登録され、承認されています。
 FCIに対しては、世界中からの要望が多いのです。ところが予算は限られており、私の立場は中立性を要求されます。となると何らかの財源が必要になるのです。※筆者注)ただ現在の時点では、
FCI脚環=FCI財源の構図は決まっていない。


吉原 鳩界発展の為に、各国協会はどんな努力が必要だとお考えですか。
テレーゾ会長 一般人の間でこのピジョン・スポーツが発展するために出来うる限り努力する必要があります。このスポーツとその美徳を促進するためには、個々の協会が努力し、この目標に貢献しなければなりません。私の国ポルトガルでは、学校、老人養護施設、老人のデイケア施設、遊園地、保育所や児童養護施設、更に国や地方公共団体から付与された土地に、公共鳩舎が立てられています。
 委託ダービー・レースは大きな成功を収めています。これらの鳩は、通常のレースのために参加する個々の鳩やチームとして参加する場合もあります。それは自宅に鳩舎がなくても、参加新出来る新しい方法です。私達はまた今、公共鳩舎でレース参加させる為の種鳩鳩舎も必要としています。それは安くて、彼ら参加者がレースからの鳩の帰還を待ちながら、参加者同士が日常集えるように考えています。
吉原 会長は今、ポルトガルの鳩界を引き合いに出されました。FCIの会長職を遂行される上で、やはりその土台は会長がポルトガル協会で行われたことにあると思います。


 それは4年前のインタビューでも伺いましたが、主として5本の柱からなるものでした。(別枠参照) 現在のポルトガル鳩界の現状について、お話しを伺えますか。
テレーゾ会長 私がFCI会長に就任した当時、ポルトガルの鳩会員は、自然増で約20,000人おりました。これは人口1000万人に対しては多い数字でした。
ポルトガルは現在、残念ながら深刻な経済危機に直面していますが、これがピジョン・スポーツに与えた影響は少なくありません。会員数は減少し、12,000人です。
ただ明るい材料は、現在減少は止まっており、平均年齢も若く、会員数が極めて安定していることです。
またポルトガルのピジョン・スポーツはかなり発展しています。 ピジョン・スポーツは、第二の国技です。ポルトガルの鳩は、過酷な気象•山岳の条件に直面しているので優秀です。レース・シーズンの開幕はお隣のスペインからで、鳩は西風に逆らって飛ぶ必要があります。これはベルギー、オランダやドイツのハトと反対のコースで、私がポルトガルの鳩が優れていると言う所以です。
吉原 鳩レースが第二の国技というと、第一はやはり?
テレーゾ会長 それはもう、文句なしにサッカーですよ。
吉原 前回のインタビューで伺った5本の柱のうちには、コンピュータリゼーションがありました。
その方面では日本は先進国の筈だったですが、今や日本もお恥ずかしながら、かなり凋落してしまいました。その後所有権証のバーコードはどうなりましたか。
テレーゾ会長 ポルトガルで所有権証のバーコードが実施されたのは、14年前のことでした。それはレース鳩の登録を簡略化するために、優れた貢献をしています。バーコードは、そのバーコード・リーダーを使うことで、協会が鳩の所有者を自動的に中央登録することが簡単にできます。そうすることによって、我々は、レースだけでなく、ワクチン接種の登録、死亡、失踪、伝染病の感染経路にいたるまであらゆる中央管理が出来ますが、これはピジョン・スポーツの発展のため、行政や保健当局内での正当性を確立するための主要なステップでした。
吉原 先ほど、今度の国際オリンピアードでも3選を目指すというお話しがありました。抱負をお聞かせ下さいますか。
テレーゾ会長 私は既に述べたように、私はスロヴァキアのニトラ・オリンピアードで次期会長に立候補します。私の目標は、FCIが世界の基準作りをしていく存在となることです。それは最終段階のプロセスです。

吉原 最後に極めて低俗なことを伺い恐縮なのですが、実は日本では現在も、他協会を舞台にある企業がFCIの方針だからと、詐欺同様の手口で商品の売り込みを行っています。
テレーゾ会長 どのような企業も許可を得ず、日本またはその他の国においてFCIの名前を使用することは許されていません。我々は今まで、FCIの名前を使用してよいかといった請願を受領したことはありません。

吉原 今後、日本の鳩界との交流で何か望まれていることはありますか。
テレーゾ会長 日本鳩レース協会との関係は一般的で他の国と何ら変わりはありません。ただFCIグランプリなどを通じて、お互いの交流が促進されれば良いと思っています。その意味では内山理事にもご協力頂かねばなりません。
吉原 お忙しい中を、長時間割いて下さり、誠にありがとうございました。
テレーゾ会長 どうもありがとう。日本のハト仲間の皆さんの健康と成功を願うことは、私の最も喜びとするところです。 
  

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ポルトガル協会の5本の柱

青少年愛鳩家の育成 
1)レース鳩を各学校、療養所、看護学校に建設。
2)若い人々に鳩レースをPRするために、各種啓蒙イベントの開催。

鳩レースの再評価運動 
1)鳩レース村(鳩舎村、鳩舎団地)を全国各地に建設。
2)一般社会の鳩スポーツ発展のサポートとして、若い人や、老人ホームの人々が鳩レースに参加したい場合、無料で楽しめるよう援助。

コンピュータリゼーションの推進 
1)グローバル・コンピューター・システムの創造推進。つまり小はクラブ、地区、連盟、協会を、ひいてはFCIを通じて全世界を、全てコンピューターで繋いだデータ・ベースの構築。
2)オプティカル・スキャンニング(視覚走査)での調査 
3)鳩と会員の調査データへのオンライン・アクセス。

国際大イヴェント 
ミラ(ポルトガルの市名)での国際(世界、ヨーロッパ・ラテン・アメリカ選手権レースを2005年の国際オリンピアードで実施)

鳩レースをスポーツとしての承認 
1)ポルトガル・スポーツ同盟の設立メンバーとなる。
2)POC(ポルトガル・オリンピック委員会)への参加。これらも国家第2位の人気スポーツとなれば、当然であろう。

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