訃報 ロジェ・デズメット=マタイス
【訃報】
最大にして最長の親友ロジェ・デズメット=マタイスに接して
吉原謙以知

鳩王国ベルギーに於いて、ひとつの歴史を築いた銘系デズメット=マタイスの当主ロジェが、去る10月16日逝去されました。
78才という現代社会では若すぎる早逝だけに悲しくてなりません。 彼と初めて会ったのは、1972年の秋でした。
私がシベリア横断鉄道の旅の後、ドイツで語学の補習の後、ポンデローザ作出ステーションで見習いをしていた際に、アイアーカンフ社長が連れて行ってくれたのが最初の出会いです。 そしてその翌年、西フランドル州コルトレイクにアパートを借りた私は、当時毎日のように故アンドレ・ファンブリアーナ氏とロジェ・デズメット=マタイスを訪問していました。
初めて1人で彼を訪問した際は、当然ながら車もなく、鉄道でヴァーレゲムの駅まで行き、そこから彼の家まで歩いていきました。現在のGoogle mapで見ると、4.5Kの距離です。 それ以後昨年暮れに最後に彼に会った時まで、よく彼はそれを思い出して、「歩いてウチに来たただ1人の男」と言ってよく笑われました。 その後は彼の妹ニコルが、駅まで迎えに来てくれるようになりました。
帰国後も月刊チャンピオン誌の発刊に併せ、日々交流し、鳩を譲り受けたり、78年には日本に招待するなどの交流が続きました。
最初に来日した当時、彼はまだ独身で、帰国後は結婚する予定だとか、母親の死後継承した鳩を含めた財産分与で、家族間に問題が生じていることに、頭を悩ませている様子でした。
初めて鳩を購入した際は、彼も手続きが分からず、僕が車で一緒にブリュッセルに行ったこともありました。
そして弊社の創業20周年等の節目節目にもよく来日してくれました。
彼の娘さんエブリンさんの結婚式には、アジアからの唯一の友人として招かれ、大変に光栄でしたが、教会での挙式から、レセプション1回を挟んで2度の披露宴を含め、20時間近い結婚式に疲れたというのも今では思い出のひとつです。
ここ数年は彼の体調も万全ではなく、数年にわたり入退院を繰り返しておりました。ヴァーレゲム北にある病院に見舞いに行くと、元気そうにして喜んでくれました。 想い起せばこの50年間は、素晴らしい、楽しい思い出が幾つもよみがえる年月でした。
それだけに早すぎると友の死が、悲しくてなりません。
ご冥福をお祈りします。 合掌