今年のヨーロッパ鳩界を総括

 

 ベルギーのナショナル・レースも残すところ、アルジャントン、シャトローVの2レースのみ。殆どレースを終了した鳩舎さえある。そんな中で、今年のベルギー鳩界を総括してみよう。

 最初に言えるのは、プロ化、大型鳩舎化の進行であろう。これは今年に限ったことではなく、近年の傾向である。ベルギーを中心としてヨーロッパや日本のような先進国全てで、鳩の飼育者人口が減少し、脚環発行数が減少している中で、なぜ鳩レースの参加羽数は減らないのか。

 

 ブールジュNレースの放鳩に同行した際、主催者アンタンテ・ベルジの会長であるフィリップ・ノルマンが放鳩地に来ており、話しかけると、「ここは関係者以外入れない軍所有の広大な駐車場で、放鳩には最適だろう」と言うので、「その通り。でももしベルギー鳩界が、まだ第二次世界大戦前のように20万人の会員を擁していたら、ブールジュNレースも恐らく参加羽数が40万羽を越えていて、大型放鳩車100台が停まれる場所なんて見つからないだろうね」 そういうとフィリップは、苦笑いしていた。


 そういうとフィリップは、苦笑いしていた。フィリップ・ノルマンは、弊社の40周年に来日したニコラス・ノルマンに至るまで4代連続鳩飼育者(であり4代連続大印刷会社を経営)の富豪の家系の3代目。私が大変お世話になったのは、先代のフィリップの父、ノルベール・ノルマン氏である。紳士であったノルベール・ノルマンとジョセフ・ファンデンブルック氏が主宰したノヴァ・クラブにも何度もお招きいただいた。当時は、2人の他に、ファンブリアーナ、シルベール・トーヤ、アンドレ・ブルッカールト。ロジェ・フェレーケ、ファンネー父子、エミール・デニス(最後の2名はノヴァ・クラブのメンバーではない。) そして、ノルマン一家は代々人格者で非常に紳士である。

 

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         (※4代続く名門鳩舎ノルマン一家) 


 さて話が少し脱線してしまったが、ヨーロッパの会員数の減少と同時に、鳩舎が大型化し、参加羽数も増大化したのは何故だろうか。
 それは勿論、経済的、国際的に見た市場の拡大であろう。1980年代までは、ヨーロッパの高価な鳩を購入したのは、殆ど日本やアメリカだけであった。日本は戦後復興の経済的繁栄を受けて、数多くのチャンピオン鳩を購入出来たのである。その後80年代から徐々に台湾の鳩界人も高価な鳩を購入するようになったが、まだ中国人はいなかった。中国人がヨーロッパ鳩界に直接来るようになったのは、90年代に入ってからである。そして彼らは確実に勢力を伸ばしてきた。彼らは現在も貪欲にその富を生かして鳩を買い漁っている。

 

 

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 例えば、実はこれは大変な秘密なのだが、今年のベルギーの最高のチャンピオン・ペアが、何と総額140万ユーロでトレードされたのである。そしてその直仔が近々競売に出されるというが、一体幾らの値がつくのであろうか。

 
 友人のヤン・ヘルマンスに、「バルセロナ国際レースに総合したギヤマンでも60万円だった」 と言うと、苦笑いしていた。

 さて最初に書いたようにひとつのトレンドは、大型化、プロ化である。それを代表するのが、フレディ&ジャック・ファンデンヘーデ、クルト&ラフ・プラテウ他と言った超大型鳩舎である。そしてそれに続くのが、オランダでは、ホーイマンス(今年からベルギーでも参戦)、ヴィレム・ドブルイン、フェルケルクと言った人々であろうか。

 ヤン・ヘルマンスは、ベルギーの3人は、ベルギー鳩界を壊そうとしている、と言う。何故ならあるナショナル・レースでは、彼ら3人で、N上位100位以内の内6割!を独占してしまったりしたからだ。確かに彼らはレース初心者の夢を潰している点もあるかも知れない。しかし一方で、彼らが大羽数のナショナル・レースを支えていて、勿論、実力者であることも間違いない。


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    (※左上から右回りでレオ・ヘレマンス、W.ドブルイン、L&H.シウン、R.ヘルマンス)


 今年のヨーロッパ中距離鳩界に関しては(正確には昨年来)、オランダのヴィレム・ドブルイン系旋風が吹き荒れたともいえよう。彼の鳩は、誰でも知っている通り、主としてレオ・ヘレマンス〜ヘレマンス=コイスタースが主流である。

 オランダでは、ヴィレム・ドブルインのたった1ペアしか持たないピート・カイパー(カイパー兄弟の弟)が、昨年大活躍し、今年は短距離のナショナル・チャンピオンになってしまった。 

 そしてベルギーで。それが重要なのである。何と言ってもベルギーは、鳩レースのメッカである。だからリック・ヘルマンが、ベルギーに住み、ベルギカのヘンク・デヴィールトの娘ニコルや、ヤン・ホーイマンスがベルギーに鳩舎を持とうとしたのである。

 オランダの長距離鳩は、既に平均レベルで、ベルギーを凌駕している。しかしこと短距離〜当日長距離に至る当日レースには、ベルギーも自負がある。

 そのような考え自体を変えたのは、或いはオランダで活躍し、ベルギーに移ったリック・ヘルマンかも知れない。そしてヴィレム・ドブルインの鳩を最初にベルギーも持ち込んで活躍したのも確実にリック・ヘルマンスである。リックのドブルイン系は、今年も8月10日現在、PIPAランキングの若鳩N最優秀鳩第一位である。そして彼は今年から初めてドブルイン作のオランダ脚環を装着した若鳩を使い始めた。


 そしてヴィレム・ドブルインは、ベルギー人の意識改革をしたのかも知れない。昨年はノルベール・アリーがドブルインの鳩を使翔して、アングレームNレースで総合優勝し、今年はロジェ・ブルーニンクスが、シャトローNレースで、24,011羽中総合優勝、更にルク&ヒルデ・シウンが超銘鳩キャメロンで何とNレース2回総合優勝した。また今年のベルギー若鳩Nレースは終了していないので、確実ではないが、Nエース鳩第一位の候補は、ヘルマン・カローンのドブルイン鳩である。そして忘れてはならない。先週のシャトローNUナショナル・レースで最高分速総合優勝を飾ったヴァイナント・ドブルインも、やはりヴィレム・ドブルイン鳩であった。(あるベルギーのサイトが、これらの報道を一切しないのは、余りにも偏りが甚だしく、如何に商売目的とは言え疑問に思う。報道が中立を捨てたらただの宣伝媒体でしかない) ヤン・ファンデパスの大活躍も同様である。  


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   (※左、ロジェ・ブルーニンクスの2019年シャトローTN総合優勝鳩)
    (※右、2019年2回連続N総合優勝、L&H.シウンの超銘鳩キャメロン)


               

 しかしベルギーで既に一流であったレオ・ヘレマンス、或いはヘレマンス=コイスタース鳩舎から直接出た鳩よりもヴィレム・ドブルインの直系の方が活躍しているのは何故だろうか。それは恐らくヴィレム・ドブルイン鳩の7割がヘレマンス鳩ではあるが、彼の基礎であるデヴィット兄弟系他との交配が成功したからであろう。

 今やベルギーで最も活躍するオランダ鳩では他の追随を許さない状況であえる。今後も目が離せない。

 

                                                                    (文 吉原 謙以知)

 


 

 

 

 

   

        

 

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