ベルギー短信
●ベルギー短信
吉原謙以知
筆者は、この5月6日からベルギーに来ています。今回は長期的に滞在する予定でもあり、毎日書くことはありませんが、その都度日記的にレポートしようかと思います。
今日5月19日はフェルゼーレ=ラーガ社のルイス・フェルゼーレ氏に食事に招待され、その際、ついでといっては何ですが、ベルジアン・マスターの委託鳩舎の前に新たに建てられた、世界選手権の若鳩委託鳩舎を見せてもらいました。
現在、ベルジアン・マスターの委託鳩舎には1,500羽の鳩が収容されていますが、世界選手権鳩舎は約半分の規模で、800羽が収容されています。
半ば向かい合うように建てられているので、世界選手権鳩舎は、あまり日当たりがよくありませんが、構造は全て同じです。
ベルジアン・マスターの最終レースは、今年8月15日ですが、ツールから放鳩されるのに対して、世界選手権は、同日にブールジュからの放鳩で行われます。
同日、違う放鳩地からの2レースというのは興味深いですね。



この日、筆者はラーガ社からすぐ近かったので、久しぶりにデズメット=マタイス鳩舎を訪問しました。実は翌日5月20日は、彼の74回目の誕生日ですが、それには合わせられなかったの、ついでに寄ったのです。
連絡を入れないで寄ったので、驚かれましたが、大層喜んでくれました。彼とはかれこれ45年のつきあいになります。我々も年をとったのでしょう。久しぶりに昔話に花が咲きました。僕が1972年、ワーレゲムの駅からトボトボ歩いて彼の家に行った時の事。彼がペドロとシャトローの2羽で、シャトローからのレースで優勝、2位をとり、歓喜のあまり、ベロンベロンになるまで酔っぱらった事。お互いの家族の事(彼は、筆者の自宅に泊まったことがあり、筆者の母も覚えていて、また筆者もロジェ・デズメットの家には彼の独身時代から泊めてもらい、家族は全て知っているので)。思い出の鳩等々。
そんな話をしているうちに、彼がとんでもない話をしてくれました。彼の鳩舎は何度も盗難にあっているのですが、今年何とブルガリアの鳩飼いから連絡があり、知らずに買ったお宅の鳩の直仔が、素晴らしいチャンピオンになったので、血統書を欲しいと言ってきたのです。
その直仔2羽の成績は当日長距離で、素晴らしい成績をあげ、何とブダペストのオリンピアードにも出ているのです。
ロジェ・デズメットは、即座にその話を断り、教えられた2羽の番号は盗難鳩だからすぐに返して欲しいと言ったところ、1羽は逃がしてしまった。という話で打ち切りとなり、それ以後連絡は来なかったそうです。盗人猛々しいという言葉がありますが。
こういう輩がいるのはビックリしました。
しかし嫌な話ばかりではありません。帰ろうとするとロジェは、私を引き留めながら、壁に飾った数々の日本の思い出を話しかけてきます。
日本で白山正恵氏や僕の記憶に間違いがなければ、山梨の岡本さん、大嶋さん、大柴さんらから貰った、貴石画を指さしながら、昔を懐かしんでおりました。
実は、ロジェ・デズメットも最近胃癌で、胃を全摘しており、同じ経験をされた白山さんとの奇縁を感じました。
彼とは、また近日会うことを約束して、彼の家を辞しました。