●閑話休題
今の鳩界人なら皆そうかも知れないが、年長者なら、昔NHKテレビの人気番組「私の秘密」というのがあったのをご記憶の方も多いだろう。全国的に知られた名アナウンサー、高橋圭三さんが、「事実は、小説より奇なり、とか申しますが〜」で始める人気番組であった。
しかし長い年月、鳩界に身をおいていると、本当に訳の分からない奇妙な話に出くわすものである。ベルギー、オランダでも話題になった話だから、既に日本でもお聞きおよびの方もいるかも知れない。
筆者が、最初にこの話を聞いた際は、私に語りかける人が、何を喋っているのか、全く理解出来なかった。
「委託レースで活躍した鳩が、今度は違う委託レースで、また大活躍したんだよ」
最初に思ったのは、単純に疑問、「そんな事可能なの?」
よく考えれば、例えば日本の両協会が、仮にそれを認めれば(許せば)の話だが、例えば伝書鳩協会で、秋のレースに活躍した鳩を、引き取った後で、鳩レース協会の委託鳩舎に預けて、春の東日本チャンピオンに参加させるようなものである。
しかし一旦、日鳩の鳩舎に馴れた鳩が、途中参加1羽だけを馴れさせる管理など、委託鳩舎では出来よう筈もない。第二の委託鳩舎のハンドラーが、そんな鳩を馴れさせる個別の訓練など、期待出来ないからである。
そして第二の疑問は、「何故、そんなことをする必要があるの?」
誰しもが思うであろう。そんな難しいことを鳩に要求するのであれば、最初から第二の鳩舎に委託すればよいのである。
しかし実際に、この「事実は、小説より奇なり」な事が起こったのである。これは嘘ではないし、マジックでもイリュージョンでもない。
今や委託レースは、花盛り、世界中で平均ひとつの国にふたつ以上はあるだろう。そして台湾のように、生後3ケ月のレースが当たり前どころか、100日レースまで行っている国なら、或いは可能性がないともいえない。
しかし実際にこれが起こったのは、ヨーロッパの2委託鳩舎においてであった。つまり生後3月程度なら、訓練しか行われないヨーロッパである。しかも最初に書いたように2鳩舎とも、若鳩での委託参加しか、認めていない委託鳩舎で起こったのである。
しかしそれにしても最初に書いたように、「なんでそんな事をする必要があるのか?」という疑問が残る。
そして実際に、その不思議な現象?それとも壮大な実験?は起こり、そして委託者は大成功を収めたのである。
皆さん、おわかりでしょうか。答えをすぐに書くのは簡単ですが、暫く考えて下さい。近日中に、この続編で答えを明かしましょう。
吉原謙以知